庭園では燕子花が咲いていました。
また藤の花も咲いていました。
そして美術館では「燕子花図と藤花図」展が開かれていました。
尾形光琳の燕子花図は伊勢物語の場面を描きながら大胆な省略を行い、男や連れの者たちの姿はどこにもありませんでした。あるいは単に燕子花をデザイン化して描いただけとも解釈できます。同じ燕子花を繰り返して描いているのかもしれませんが、見た印象では多種多様な描写が行われていると感じました。
燕子花は伊勢物語の八橋の段に登場する花です。
男が三河の国八橋に着いたところ、燕子花が美しく咲いていた。そこで「かきつばた」を各句の頭において旅の思いを詠んだ。
からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ
(慣れ親しんだ妻が京にいるので旅が物悲しく思われる)
京の都を離れた男の望郷の思いに連れの誰もが涙した、と。
伊勢物語は簡潔な短い文章によって読者の想像をかき立て、歌によって物語の各段を鮮やかに締めくくるところが特徴だと思います。
以前出光美術館で伊勢物語展がありました。そのとき筒井筒の段に感動したことを覚えています。子供のころ井戸のそばで互いの髪の長さを比べ合った男の子女の子は成長しやがて夫婦となった。けれどもやがて男は他に女を作りその家に通うようになった。あるとき男が外出するふりをして自分の家を外から覗いてみると、妻は夫の無事を願って歌を詠んでいた。その姿を見て夫は他の女の元に通うのを止めた、という話です。
私がこの話に感動した理由は、夫を待つ貞淑な妻の姿に感動した、ということではないです。むしろ簡潔な描写によって運命の変転に対する想像がかき立てられた、というのが正しいです。
特別展 燕子花図と藤花図 光琳、応挙 美を競う
会場:根津美術館
会期:2014年4月19日(土)~5月18日(日)
開館時間:10:00 - 17:00
休館日:月曜日 (5月5日(月・祝)開館)
夜間開館:5月13日(火)〜18日(日)
開館:午後7時まで
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