2014年7月28日月曜日

オルセー美術館展

国立新美術館「オルセー美術館展」に行きました。
目玉の一品だけということでなく、全体としてこれほど混雑している展覧会は久しぶりです。日曜の13時ころ到着したときは入場制限なく入れましたが、15時ころには入場制限を行っていました。
カバネル「ヴィーナスの誕生」の前では「きれい」「きれい」と口々に声がもれていました。アカデミーの写真風の筆致は伝統に根ざしたものというよりは、当時の大衆の好みに合わせたのだということがよく分かりました。

印象派の風景画が良かったです。
ルノワールの「シャンロゼーのセーヌ川」からは、色そのものの魅力が感じられました。
セザンヌの「レスタックから望むマルセイユ湾」「マンシーの橋」には、色の配置のリズム感の魅力がありました。
モネの「アルジャントゥイユの船着場」には、すがすがしい空気が感じられる良さがありました。
また「アカデミーからも印象派からも距離を置いた」ファンタン=ラトゥールの肖像画には、確かに両者とは違った独自の世界を感じることができました。

展示室内は冷房が効いていて寒いです。長袖ワイシャツに上着を羽織って観賞しましたが、特に暑いということはなかったです。

オルセー美術館展 印象派の誕生 ―描くことの自由―
会期 2014年7月9日(水)~10月20日(月)
休館 毎週火曜日 ただし、8月12日(火)、9月23日(火・祝)、10月14日(火)は開館、9月24日(水)は休館
開館時間 10:00~18:00 金曜日は20:00まで 8月16日(土)以降の毎週土曜日および10月12日(日)以降は毎日20:00まで 入場は閉館の30分前まで
会場 国立新美術館 企画展示室2E

2014年7月19日土曜日

虎ノ門ヒルズの内海聖史さん作品

虎ノ門ヒルズに展示してある内海聖史さんの作品「あたらしい水」を観ました。
1階の車寄せに面したロビーに5枚の絵が並んでいます。展示場所にはガラスケースなどなく、忙しく往来するヒルズの客たちを尻目に立ち止まってじっくり観賞することも可能です。1枚の画面サイズが大きく、聞くところによると助手を使っての制作だったようです。
絵には空間的な、実際の風景を連想する絵も(まるで森を地面から仰向けに眺めているような絵も)ありましたが、それだけではなく、時間を感じさせるような、音楽との親和性を感じる絵もありました。多彩な色合いがオーケストラのさまざまな楽器の音色を思わせるのでした。(かつて吉田秀和氏がセザンヌの林檎の絵をオーケストラ曲になぞらえたように。)

虎ノ門ヒルズのホームページには内海さん本人のインタビュー映像があり、とても面白いです。制作風景も映っています。

2014年7月5日土曜日

このブログについて

ブログタイトル「Sie hätte halt doch mich…」は、NHKラジオ講座の「まいにちドイツ語」の中に出てくる文章からとりました。
講座での文章は「Sie hätte halt doch mich heiraten sollen.」という文章ですが(日本語訳は「彼女は僕と結婚すればよかったのに。」)、後半部分を省略しています。そのためブログタイトルを日本語に訳すなら、「彼女は…すればよかったのに。」という感じでしょうか。
ちなみに「田中一郎」はゆうきまさみさんの漫画「究極超人あ〜る」の主人公R・田中一郎からとっています。
Gmailのアドレスを持っていたのでそのままGoogleのブログにしましたが、ブログアドレスが分かりづらく(おまけにブログタイトルも分かりづらく)、申し訳ありません。
はろるどさんのブログを目標に書きたいと思っています。

ローベルト・ムージルの「愛の完成」の翻訳について:
「愛の完成」は、2011年3月に青山ライフ出版から「クラウディーネの愛」というタイトルにして自費出版しました。
出版した後で翻訳に直したいところが出てきたので2012年に改訂版を作り、「ヴェローニカの誘惑」という作品を足し、渡辺紅月さんの作品を表紙に使わせてもらうようお願いして(ギャラリーQの上田雄三さんにはお世話になりました)、もう一度出版しました。
ところが時間が経ってみるとさらに翻訳を直したいところがいくつも出てきたので、全面的に改訂した上で(本の形で出版するのでなく)ブログに掲載することにしました。今のところこのブログ版が最終版です。
もう一度テキストファイルの形で掲載しておきます。不慣れなのでうまくリンクできているでしょうか。それではよろしくお願いします。

愛の完成

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
田中一郎 訳『愛の完成』は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

バルテュス最後の写真 密室の対話

三菱一号館美術館の「バルテュス最後の写真 密室の対話」展に行きました。
ヴァロットン展とはチケット売り場も入口も違っていて、一室だけでの展示でした。
室内で少女がソファに横たわるポラロイド写真が並んでいます。モデルを務めるのはアンナ・ワーリ嬢。彼女が書いた「水曜日の午後」という文章の抜粋が展示してありました。それによると、彼女はバルテュスの隣人であり、ある日モーツァルトを口ずさんでいたところ、運命的なものを感じたバルテュスが親を介してモデルを依頼したのだそうです。彼女は8歳から16歳まで毎週水曜の午後にバルテュスの家を訪れますが、誰に強制されたわけでもなく自分の意志であったこと、彼に「祖父のような、友人のような」親しみを感じていたことを書いています。
8歳に近い頃の写真では自然光だけを使い、光を浴びた白い肌と影となった黒の部分とのコントラストが強調され、神秘的な感じがありました。16歳に近い頃の写真では画面全体に照明を当てており、大人の体になりつつある少女の身体の生み出す曲線を強調していました。それらの写真を題材に晩年のバルテュスは絵を描いていたわけです。
ショップには今回のポラロイドの写真集もありました。「BALTHUS room17」の方は2800円という値段で、蛇腹式の凝った作りの製本で写真は13点ほど。高価な方の本は値段が約10万円。こちらはもう少し点数が多いようです(詳細には中身を確認できませんでした)。

会 期    2014年6月7日(土)~9月7日(日)
会 場  三菱一号館美術館 歴史資料室(入口は広場側でなく大名小路側)
開館時間    10:00~18:00(金曜は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで