2017年1月3日火曜日

フルトヴェングラー変奏曲

NHK-FMで「フルトヴェングラー変奏曲」としてフルトヴェングラー特集の4日連続放送がありました。名盤として誉れ高い演奏を紹介しつつ、ルツェルンでのリハーサル音源なども流したりして興味深い放送でした。

第九は第四楽章のみを1942年の録音と1951年の録音とで流していました。1951年はバイロイト音楽祭のライブのうち、バイエルン放送協会の録音の方を流しており、巷間「バイロイトの第九」と呼ばれている方ではありませんでした。ゲストの相場ひろさんは「同日のライブ録音が2つあるということは、片方はゲネプロなどの音源をつぎはぎしたものなのではないか」と言っていました。「バイロイトの第九」の方がリハーサル音源とのつぎはぎだ、との断定は慎重に避けていました。
私自身はフルトヴェングラーのベートーヴェン録音で聴くことがあるのは第九番の第三楽章(フィルハーモニア管弦楽団との演奏)なのですが、バイエルン放送協会盤の方も聴いてみたくなりました。

ゲストの宮本文昭さんは指揮者として、オーボエ演奏者としての立場から、フルトヴェングラーの指揮ぶりを徹底的、粘着質的と指摘しつつ、オーケストラの素晴らしさに裏付けされた、聴衆の心をとらえる演奏の素晴らしさを語っていました。
最後に語っていたことは「ベートーヴェンの作品は第九で終わったのではない。彼はその後も作品を書いた。ベートーヴェンの作品には一種こけおどしの面があるが、彼の作風は交響曲の後、さらに変わった。後期の弦楽四重奏曲がそれにあたり、そこにはベートーヴェンの真骨頂、虚飾を排した作品たちがある。そして後期の弦楽四重奏を弦楽合奏に編曲した版があり、バーンスタインはその録音を残している。フルトヴェングラーがそれらの作品とどう対峙するのか、録音があればぜひ聴きたかった。」でした。
それに対してゲストの相場ひろさんは答えます。「『大フーガ』ならあります。」と。

ここでお知らせしておきましょう。大フーガ以外にもフルトヴェングラーがベートーヴェンの弦楽四重奏(弦楽合奏編曲版)を演奏した録音があります。
「Beethoven: War Time Recordings」(Andromeda)
をお聴きください。作品130の弦楽四重奏曲から「カヴァティーナ」を弦楽合奏に編曲した版をフルトヴェングラーが指揮しています。戦時中の録音であり当時フルトヴェングラーは壮年期の気力が充実していた時期ですが、静かな枯淡の境地とも表現できるような演奏です。