東京芸術劇場で藤倉大さんのオペラ「ソラリス」(演奏会形式)を観ました。
音楽はまるでソラリスの海のように独立して存在しており、歌の伴奏という感じではなく、ときどき大きく盛り上がって歌手の声をかき消していました。一般的なオペラの感覚とは違います。海の描写という感じはしませんでしたが、地球外の別天体という雰囲気はありました。
ハリーは脳内の記憶から作り出されたものという心理的な側面より、オリジナルかコピーかという本物/偽物の側面が強調されていました。朗唱風の歌が多い歌手の中にあって、ハリーの歌は美しい旋律が聴き取れました。他には、クリスと死んだギバリャンとが会話をする場面は印象に残りました。(彼は何者だったのだろう?)
あれだけタルコフスキーやソダーバーグを厳しく批判したレムの言葉を読んだら、レム本人の文章を丸ごと使いそうなものですが、台本はレムの原作にない文章がふんだんに使われていました。堂々と自分の世界を構築した作品でした。
藤倉さん自身の言葉によると、まず勅使川原さんが日本語で台本を書き、それを英語に訳しながら藤倉さんが作曲したとか。翻訳による変容を怖れない点が作品の根底をなしているといえそうです。
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