東京都現代美術館「MOTアニュアル2014フラグメント 未完のはじまり」に行きました。
福田尚代さんの展示がありました。以前は回文の展示をしていた彼女ですが、今回は文字の分解・解体を行っていました。
本の中のある一文だけが見えるような状態で展示されていました。その一文に含まれる「バートルビー芸術」という単語を際立たせるように。バートルビー。すなわち創造することに対する困難性の象徴。エンリーケ・ビラ=マタスの「バートルビーと仲間たち」の中の文です。
別の展示ではアルチュール・ランボーの手紙の翻訳本のページを並べていました。何枚かの紙では文字がぼやけ見えないのですが、よく見るとページに微小な穴が開いていて、そのせいで文字が読めなくなっていました。まるで病気の牛の脳細胞を電子顕微鏡で撮影したところ、微細な穴が開いていて組織がスポンジ状になっていた、とでもいうように。
ランボーは人生の途中で詩作をやめ、後は商人として、ただ文章といえば手紙を書くだけで後半生を過ごしたのでした。そしてビラ=マタスはランボーをバートルビーの一人に分類していましたが、バートルビーという単語を「書くことに困難を感じること」のような、一般的な広い概念として使っていました。
「バートルビーと仲間たち」という本を手にしたとき、私はランボーとバートルビーの関係について、もっと狭い意味で使われているのかと思っていました。
例えば作曲家のラヴェルが晩年に脳に異常をきたし、「日常生活は可能なのに音符を書くことができない」状態におちいったように。ランボーは手紙のような文章を書くことに何の障害もなかったのだが、詩を作ることはできなくなるような脳の異常を発症したのではないだろうか…
残念ながらそのような記載はありませんでした。そしてそのようなことを言っている研究者がはたしているのかどうか、私には分からないのでした。
展覧会では他に高田安規子さん政子さんの展示もありました。精巧なトランプの模様からペルシャじゅうたんへと想像が広がるような作品の展示が印象に残りました。
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