東京都現代美術館「山口小夜子 未来を着る人」を観ました。
若き小夜子さんの姿を写した横須賀功光さんの写真は、広告写真として撮られたものでありながら作品写真としての美しさがありました。スナップのような生き生きとした表情と入念な背景の作り込みとが共存しており、若々しい姿には圧倒的な美のオーラがありました。大判の写真の他に、コンタクトプリントが並べられそのうちの一枚に印が付いて、それが実際に採用されたのだと分かるような展示がありました。資生堂の広告で中村誠さんのディレクションは、入念なトリミングと写真細部への修正を施すことによって広告を越えた尋常ではない質の高さに到達していました。
映像ではファッションショーの様子がいくつか流れていました。でももっとその何倍、何十倍もの量でランウェイでの小夜子さんの動きを見たかったです。着る服によって体の動きを変え人格を変える姿を確かめたかったという気がしました。
おかっぱの黒髪、切れ長の眼差しというある種の様式美でモデルとしてファッションショーに参加し、テレビCMに出演する。それはいわば、周囲の願望や期待など、他人の思いを身にまとい着こなしているとも言えるわけですが、ウェアリスト(着る人)と自ら名乗った小夜子さんはそれを引き受け、まったく気にもしていない様子でした。
70年代から80年代にかけて小夜子さんの周囲にいて一緒に仕事をした人々は真に独創的な仕事をしていたということ、小夜子さんの姿は既存のイメージを後追いしたものではなくオリジナルの存在だったということを、今回の展示で知ることができた気がしました。美術館で山口小夜子さんの姿を見ることができてよかったです。
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