千葉市美術館での小川信治展に行きました。
対称性を強調する鉛筆画作品たちがありました。それはアントワープ、ジュネーブ、ストラスブールなど、ヨーロッパの都市たちの、対称性を重んじて設計された町並みをさらに左右対称にしたものでありました。
また「モアレの風景」は塔などの建物や道を寄せ集め、全体としてモンサンミッシェルのような風景を作り上げていました。
映像作品である「干渉世界」では、写真の中の一部の人物や背景が、まるでPhotoshopのレイヤーを移動するがごとく、連れ立ってするすると別の場所に移動していました。
それまで家族のように一つの場所にあった男女や子供は別々に別れ、元々それらは別の写真の中にあった無関係な人間たちであったことが示されていました。また、あるときは背景自体がするすると上下にレイヤー移動し、新たな背景がその背後に現れていました。
人間同士の関係にせよ、人間と背景の関係にせよ、それらを新たに組み換え、また結合し、新しい関係を作ろうとする試みであると感じました。
レオナルド、フェルメールなどの古典絵画から人物を切り取る作品もありました。また、前景の人物像が左右に分かれて画面隅に追いやられ、隠されていた後景が姿を現す作品もありました。それまでの作品から人物がいなくなった世界、すなわちもう一つの並行宇宙に存在する世界を描いたとのことです。
いずれの作品においても、自由自在に戯れる作品の裏側には確かな描写が存在し、作品を作り上げる忍耐が存在しているのでした。