ローベルト・ムージル作「愛の完成」を翻訳してみました。(その1)
(改訂したため削除しました。2016年7月1日)
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2014年1月26日日曜日
ローベルト・ムージル作「愛の完成」
ローベルト・ムージル作・古井由吉訳「愛の完成」は以前から好きな作品でした。
難解な文章が延々と続く作品なのですが、夫への愛をどこまでも高めようとする妻の思考を縦糸に、過去の乱れた性生活の記憶や旅先での行きずりの男との行状を横糸にした、細かい論理の編み目がやがて不倫へと織り上げられていく見事な作品だと思いました。
表面は夫への忠節を誓い目の前の男への嫌悪を表現していながら、その裏側に精神的にも肉体的にも男へ惹きつけられ囚われていく女の心理が垣間見えるような気がするのでした。
原文は抽象的な表現を多用していて意味が一つに定まらない難解さがあるのですが、古井由吉さんの訳はやはり抽象的で意味の分かりにくい、それでいて何かが伝わるような印象を与えるものでした。
しばらく古井さんの訳を読んで満足していたのですが、ふと「自分で日本語に訳したらどうなるだろう」と思いました。原文をできるだけ理解できるような文章に、最もふさわしいと思われる一つの意味を取り出すようにして訳してみました。自分を原作者と同化するというよりも、むしろ原作者と読者の間の仲介者になろうとして翻訳を進めました。
私自身はドイツ語に堪能ではなくムージル研究者でもないのですが、手間をかけて辞書を引いた結果がどなたかの役に立つものでしたらうれしいです。
ムージルは1942年に亡くなったのですでに没後70年以上が経過しており、原作者の著作権が切れていると考えて翻訳を公開するのですが、これはムージルの原作を利用して金銭的な利益をあげようとするものではありません。またこの翻訳を再利用していただいてもかまいません。
(クリエイティブ・コモンズの表現では「表示・非営利」ということになるでしょうか。)
難解な文章が延々と続く作品なのですが、夫への愛をどこまでも高めようとする妻の思考を縦糸に、過去の乱れた性生活の記憶や旅先での行きずりの男との行状を横糸にした、細かい論理の編み目がやがて不倫へと織り上げられていく見事な作品だと思いました。
表面は夫への忠節を誓い目の前の男への嫌悪を表現していながら、その裏側に精神的にも肉体的にも男へ惹きつけられ囚われていく女の心理が垣間見えるような気がするのでした。
原文は抽象的な表現を多用していて意味が一つに定まらない難解さがあるのですが、古井由吉さんの訳はやはり抽象的で意味の分かりにくい、それでいて何かが伝わるような印象を与えるものでした。
しばらく古井さんの訳を読んで満足していたのですが、ふと「自分で日本語に訳したらどうなるだろう」と思いました。原文をできるだけ理解できるような文章に、最もふさわしいと思われる一つの意味を取り出すようにして訳してみました。自分を原作者と同化するというよりも、むしろ原作者と読者の間の仲介者になろうとして翻訳を進めました。
私自身はドイツ語に堪能ではなくムージル研究者でもないのですが、手間をかけて辞書を引いた結果がどなたかの役に立つものでしたらうれしいです。
ムージルは1942年に亡くなったのですでに没後70年以上が経過しており、原作者の著作権が切れていると考えて翻訳を公開するのですが、これはムージルの原作を利用して金銭的な利益をあげようとするものではありません。またこの翻訳を再利用していただいてもかまいません。
(クリエイティブ・コモンズの表現では「表示・非営利」ということになるでしょうか。)
2014年1月17日金曜日
東京都写真美術館
東京都写真美術館に行きました。
地下1階は高谷史郎さんの「明るい部屋」です。
レンズを使って対象物を平板に映す光学装置「カメラ・ルシダ」、ロラン・バルトが著書「明るい部屋」で取り上げた過去の有名な写真家の作品など。
印象に残ったのはディスプレイに映った円形の映像の展示です。円の周辺部に360°の地平線が映っていて、円の中心に真上の空が位置していました(魚眼レンズを使って撮影した映像)。雲が猛スピードで流れ、やがて日が沈んで夜の景色になるのでした(何万枚もの写真を高速でつないだ映像とのこと)。それからびわ湖ホールでのパフォーマンスの映像(先ほどの魚眼レンズの映像を天井のスクリーンに映し、舞台上で演者が演技をする)も謎めいていて心に残りました。
2階は5人の新進作家の作品展「路上から世界を変えていく」です。
林ナツミさんの写真はやはり人間が浮遊していました。でも今回の展示作品では、ユーモラスな感じというよりも大画面で高精細なもの、立体視のための2枚組写真などへ主眼が移っているのでした。
糸崎公朗さんの作品の中には、都会の大きなビルの写真と、道端にひそむ一匹の昆虫の写真とを、その間をつなぐ写真を何枚もつなげて一つの作品にしたものがありました。大きいものと小さいものとが一つに共存していて面白かったです。
3階は植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ「写真であそぶ」です。
ラルティーグの作品は家族の一瞬の動きをとらえたものが多く、人物の動きの面白さ、ユーモラスな雰囲気が写真撮影によって抽出されているのでした。
植田正治の作品(子供たちの写真、砂丘での家族写真など)はラルティーグよりも演出が加えられているのですが、でもそれによって面白さが増しているような気がしました。
地下1階は高谷史郎さんの「明るい部屋」です。
レンズを使って対象物を平板に映す光学装置「カメラ・ルシダ」、ロラン・バルトが著書「明るい部屋」で取り上げた過去の有名な写真家の作品など。
印象に残ったのはディスプレイに映った円形の映像の展示です。円の周辺部に360°の地平線が映っていて、円の中心に真上の空が位置していました(魚眼レンズを使って撮影した映像)。雲が猛スピードで流れ、やがて日が沈んで夜の景色になるのでした(何万枚もの写真を高速でつないだ映像とのこと)。それからびわ湖ホールでのパフォーマンスの映像(先ほどの魚眼レンズの映像を天井のスクリーンに映し、舞台上で演者が演技をする)も謎めいていて心に残りました。
2階は5人の新進作家の作品展「路上から世界を変えていく」です。
林ナツミさんの写真はやはり人間が浮遊していました。でも今回の展示作品では、ユーモラスな感じというよりも大画面で高精細なもの、立体視のための2枚組写真などへ主眼が移っているのでした。
糸崎公朗さんの作品の中には、都会の大きなビルの写真と、道端にひそむ一匹の昆虫の写真とを、その間をつなぐ写真を何枚もつなげて一つの作品にしたものがありました。大きいものと小さいものとが一つに共存していて面白かったです。
3階は植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ「写真であそぶ」です。
ラルティーグの作品は家族の一瞬の動きをとらえたものが多く、人物の動きの面白さ、ユーモラスな雰囲気が写真撮影によって抽出されているのでした。
植田正治の作品(子供たちの写真、砂丘での家族写真など)はラルティーグよりも演出が加えられているのですが、でもそれによって面白さが増しているような気がしました。
2014年1月10日金曜日
大貫妙子トリビュート・アルバム
「大貫妙子トリビュート・アルバム」を聴きました。
発売日から少し日が経ってしまいましたが。発売元はエイベックス・マーケティング。ライナーノーツに本人の文章がなく、公式ホームページに発売の告知が出る、そのような商品です。
不思議な気がするほど曲に合っていたのは、奥田民生さんの「突然の贈り物」でした。女性の立場からの歌詞であることを意識させることもなく、女を演じることもなく、淡々と、マイペースで歌っていました。最近の大貫さんの一音一音を切るような歌い方でなく、音を伸ばして、つなげた(それはアルバム「ミニョン」の頃の大貫さん本人の歌い方でもあったわけですが)歌い方でした。
原田知世さんの「色彩都市」は音程の取り方が音符そのものよりちょっとずらして入ってくるような、微妙な翳りや色合いを出しているようで、大貫さん本人と表現の類似性が現れているように思え、やはり魅力的なのでした。
そして私がこのアルバムを購入する決め手となったラジさんの「風の道」。坂本龍一さんのドラマチックな編曲は好きでした。でも今回聴くと神秘的なほどの壮大なスケール感は乏しいのでした。かつて坂本龍一さんのラジオ(NHK-FM「サウンドストリート」)で流れたときは安価なラジカセで安いカセットテープに録音したにもかかわらず、感動したのに。ラジさんのストレートな歌い方も同曲のベスト歌唱という気がします。というわけで感動を求める方はLP「キャトル」を最新のアナログプレーヤで演奏してみてはいかがでしょうか。
発売日から少し日が経ってしまいましたが。発売元はエイベックス・マーケティング。ライナーノーツに本人の文章がなく、公式ホームページに発売の告知が出る、そのような商品です。
不思議な気がするほど曲に合っていたのは、奥田民生さんの「突然の贈り物」でした。女性の立場からの歌詞であることを意識させることもなく、女を演じることもなく、淡々と、マイペースで歌っていました。最近の大貫さんの一音一音を切るような歌い方でなく、音を伸ばして、つなげた(それはアルバム「ミニョン」の頃の大貫さん本人の歌い方でもあったわけですが)歌い方でした。
原田知世さんの「色彩都市」は音程の取り方が音符そのものよりちょっとずらして入ってくるような、微妙な翳りや色合いを出しているようで、大貫さん本人と表現の類似性が現れているように思え、やはり魅力的なのでした。
そして私がこのアルバムを購入する決め手となったラジさんの「風の道」。坂本龍一さんのドラマチックな編曲は好きでした。でも今回聴くと神秘的なほどの壮大なスケール感は乏しいのでした。かつて坂本龍一さんのラジオ(NHK-FM「サウンドストリート」)で流れたときは安価なラジカセで安いカセットテープに録音したにもかかわらず、感動したのに。ラジさんのストレートな歌い方も同曲のベスト歌唱という気がします。というわけで感動を求める方はLP「キャトル」を最新のアナログプレーヤで演奏してみてはいかがでしょうか。
2014年1月3日金曜日
大浮世絵展
江戸東京博物館「大浮世絵展」に行きました。
春信、歌麿、写楽、北斎、広重、国芳など有名な絵師の絵がずらりと並んでいるのを見ると、どうしてこんなに有名どころが集合できたのだろうと少し不思議な気がしましたが、正月にふさわしい華やかさを感じることができました。(正月限定の展覧会というわけではありませんが。)
個人的には鳥居清長の絵が印象に残りました。大勢の人物を描いていながら、その姿態も、着物の着方も、きちんと全員の個性が描き分けられているのでした。千葉市美術館での清長の展覧会(2007年)は今も記憶に残る良い展覧会でしたが、それを思い出しました。
1月2日の初日ですでに混雑していました。チケットを買う列が数十人、中に入ってもずらりと列ができています。ただ列は動いているので観賞できないということはないでしょう。
2014年1月2日(木) − 3月2日(日):江戸東京博物館
2014年3月11日(火) − 5月6日(火):名古屋市博物館
2014年5月16日(金) − 7月13日(日):山口県立美術館
春信、歌麿、写楽、北斎、広重、国芳など有名な絵師の絵がずらりと並んでいるのを見ると、どうしてこんなに有名どころが集合できたのだろうと少し不思議な気がしましたが、正月にふさわしい華やかさを感じることができました。(正月限定の展覧会というわけではありませんが。)
個人的には鳥居清長の絵が印象に残りました。大勢の人物を描いていながら、その姿態も、着物の着方も、きちんと全員の個性が描き分けられているのでした。千葉市美術館での清長の展覧会(2007年)は今も記憶に残る良い展覧会でしたが、それを思い出しました。
1月2日の初日ですでに混雑していました。チケットを買う列が数十人、中に入ってもずらりと列ができています。ただ列は動いているので観賞できないということはないでしょう。
2014年1月2日(木) − 3月2日(日):江戸東京博物館
2014年3月11日(火) − 5月6日(火):名古屋市博物館
2014年5月16日(金) − 7月13日(日):山口県立美術館